私たち(J-TRC)について
J-TRC(ジェイ・トラック)は 認知症予防薬の開発のために、Trial(治験*1に)Ready (即時に準備できる) Cohort (コホート:人の集まり)をつくりあげることを目的とする研究です。
アルツハイマー型認知症の発症リスクを持つ可能性のある方を対象として、 ⽇本医療研究開発機構(AMED)の研究費「認知症プレクリニカル期‧プロドローマル期を対象とするトライアルレディコホート構築研究」によって実施しています。
東京大学の岩坪威(いわつぼ たけし:東京⼤学⼤学院医学系研究科神経病理学教授、東京⼤学医学部附属病院早期‧探索開発推進室室⻑、国立精神・神経医療研究センター神経研究所長)が主任研究者として、全国の9つの臨床施設(東北大学病院、新潟大学脳研究所、東京大学医学部附属病院、国立精神・神経医療研究センター、東京都健康長寿医療センター、国立長寿医療研究センター、大阪大学医学部附属病院、神戸大学医学部附属病院、神戸市立医療センター中央市民病院)と協力して2019年から行っています。
また、2021年3月まで国立精神・神経医療研究センターで行われていたIROOP®(アイループ)*2 が終了したことに伴い、2021年4月からは、IROOP®の参加者のうち希望される方をJ-TRCで引き継がせていただいています。
J-TRC研究は
①J-TRCウェブ研究と、
②J-TRCオンサイト研究
の2つの研究からなりたっています。
詳しくはJ-TRCの参加方法(登録)について、をご覧ください。
アルツハイマー病について
認知症は日本のみならず世界的に大きな課題となっています。
アルツハイマー病は、その中でも多くを占めると考えられています。
アルツハイマー病では、徐々に認知機能が低下し、次第に日常生活の自立が障害されます。
現在用いられている治療薬では、脳の変化の進行を防ぐ効果はないことがわかっています。
最近の研究から、症状が出る15~20年前から脳内の物質的な変化が始まることがわかってきています。
アルツハイマー病では、脳内の変化はあるけれども症状はない「プレクリニカル期」、認知機能の幾分の低下はあるが日常生活の自立は保たれている「プロドローマル期」(MCIともいわれています)そして、「アルツハイマー型認知症」へと進んでいきます。(図1)


プレクリニカル期の方に対しては症状が出るのを防ぐ予防治療薬、プロドローマル期に対しては症状が出ていてもそれ以上の進行を食い止める治療薬が望まれています。
また、脳内の物質的変化があるかどうかを知るためにはPET検査や脳脊髄液検査が必要ですが、多くの課題があり、より簡便で安価な検査が求められています。
こういった新しい治療薬や検査が実際に使われるようになるためには、治験*1あるいは臨床研究という段階を経て承認される必要がありますが、プレクリニカル期やプロドローマル期アルツハイマー病の方は症状がないか、または軽いため医療機関を受診されることが少なく、治験*1や臨床研究の参加者を集めることは難しく、研究の遅れにつながっていることが問題となっています。
- *1
- くすりの開発の最終段階で、国の承認を得るため、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べるための臨床試験を、特に「治験」と呼んでいます。
- *2
- IROOP®とは、は認知症予防のためのインターネットを活用した健常者のレジストリー研究で、2016年から2021年3月まで、脳とこころの疾患の克服を目指す国立精神・神経医療研究センターにおいて行われました。